モチベーションの低いレンガ職人は悪か？

レンガ職人のモチベーションと将来の話

イソップ寓話（と言われている話）で3人のレンガ職人という話がある。
注）ググったところ、どうもイソップオリジナルの話ではないらしいｗｗ俺の嫌いなマナー講師とかああいう人種が飛びついて使い始めたに違いない。

こちらのページから引用すると…
「何をしているのですか？」
と尋ねました。

すると、その3人のレンガ職人は三者三様で答えました。

1人目は、「見ればわかるだろう。親方の命令で“レンガ”を積んでいるんだよ。大変だからもうこりごりだよ」
と面倒臭そうに答えました。
2人目は、「レンガを積んで“壁”を作っているんだ。この仕事は大変だが、賃金が良いからやっているんだ。」と。
3人目は、「レンガを積んで、完成まで100年以上かかる“教会の大聖堂”を造っているんだ。この教会は多くの信者の心のよりどころとなり、完成したら多くの人が喜ぶだろう。こんな仕事に就けてとても光栄だよ」と。

主にモチベーションの文脈ででてくるのだが、仕事に対する理想が高いほうが後々成功しやすい的な結論の話である。

職人に求められるスキル

だが待ってほしい。ホントにレンガ職人が単純にレンガを積むことを目的にしてはいけないのか。

上記の話には「練度」という観点が抜けているように思う。

練度、つまりは作業の習熟度であるわけだが、おそらくこの中で一番練度が高く、作業の仕上がりが一番いいのは1人目である。だって、レンガ積む仕事しかしてないんだから、当然レンガ積みのスキルは高くなっていくでしょ？親方に怒られるのがいやだから、作業水準は一定レベル以上になっていくはずだし。

2番目は練度はそこそこで仕上がりも普通。給料もらえる水準のクオリティは保つはず。

3番目は理想は高いもののあまりレンガ積みということ自体に興味を持っていないので、おそらく作業の仕上がりが雑。理想が高いのはいいのだが、レンガ積みという作業自体には興味がないので、担当作業に対してはあまりこだわりがないと思われる。
（SI系IT業界で働くものとして、個人的に「作業者として」一番信用できないのは3人目である。マネージャとしてもコストとデリバリー守れなさそうで、ブラックプロジェクトになりそうな気がする。）
「出来ましたー！」っつって出してきたものの仕上がりが悪くて手戻り多そうである。

1人目は1人目でこだわりが強すぎてスケジュールの遅延を気にしなさそうな感じはあるが、出来上がりは上等。手戻りもあんまりない。

そういう意味では仕上がりがそこそこで、スケジュールも守りそうなのは2番目かなという感じがする。

大体、作業者と社長に求められるスキルとマインドセットが違うのに、作業者として臨むときに社長的な意識高い目線で作業しててもダメなのである。

モチベーションが高かろうが低かろうが、正確かつ高品質に作業ができるスキルがある人が必要なのである。そこはブラックボックスで正確なアウトプットが出てくればいいと思うんだけど、モチベーションという内部構造を求める人がなぜか多いんだよなぁ…。

「手段を目的化」する第4の人物が欲しい

職人としてスキルを磨くという観点で言えば、「手段を目的化する」ことって大事だと思う。

4人目の登場人物として、「レンガ積みが好きで好きでたまらない。一日中レンガを積むことを考えていて、どうすれば美しく頑丈にレンガを積み上げられるか日々試行錯誤している。」という人を設定するとしっくりくる。

多分、世の中ですげぇプログラマーや技術者っていうのは大体こういう人。クオリティの高い職人ってこういう傾向がある人だと思う。

無能の壁にぶち当たるか？

10年後の1～3人目の進路として、1人目は現場でレンガ積み、2人目は稼ぎの高い職種に転職、3人目は人を指導する立場にとまとめられている。

ただ、レンガ積みがうまいことと管理職の適正はイコールではない。

無能の壁（ピーターの法則というらしい）というのがあって、いわゆる「人は無能になるところまで出世する」というやつである。

現場で優秀な人が管理職としても優秀とは限らない。
一流のサッカー選手が一流の監督とは限らない、といえばなんとなくイメージがつくだろうか。

レンガ職人としてのモチベーションが高くても、現場監督に向いているか、部下の管理やコストの管理や工程の管理ができるかは別の話である。

まとめ

ということで、個人的には下記のように書くと違和感がない。

1人目はレンガ積み職人として優秀
2人目はレンガ職人のスキルを活かして同業他社に高い賃金で転職できた
3人目は職人としてはそこそこ優秀でコミュニケーション能力もあり、管理職の適正があったから出世できた。
（ついでに、4人目はとにかくレンガ積みのエキスパートでこの人じゃないとできない仕事があるレベル）

とりあえずこのレンガ職人の話に違和感を覚える口なので、グダグダ書いてみた。
この方の解釈が一番しっくりくる感じである。